「モバイルバッテリーが出火した」「充電中に焦げ臭い匂いがした」――そんなニュースを目にして、自分が使っている製品は大丈夫だろうかと不安になったことはありませんか?
結論から言うと、モバイルバッテリーの出火原因の多くは、使用者が気づかないうちに行っている「ある行動」にありました。そして、2025年6月に製品評価技術基盤機構(NITE)が発表した最新データによると、実に5年間で1860件ものリチウムイオン電池搭載製品の事故が報告されており、そのうちの約85%が火災事故です。さらに注目すべきは、事故が最も多く発生している製品がモバイルバッテリーだという点です。
でも、ご安心ください。出火原因を正しく理解し、日常のちょっとした行動を見直すだけで、リスクは大幅に減らせます。この記事では、NITEや消費者庁の最新データ、2024年末に変更されたPSE法の新基準までを徹底調査。ほかの記事にはない具体的な数値と実践的な対策をお届けします。
最新データが示すモバイルバッテリー出火の実態
2025年7月にNITEが公表した資料によると、2020年から2024年までの5年間に報告されたリチウムイオン電池搭載製品の事故件数は1860件。そのうち火災に至ったケースは約85%にあたる1587件でした。
そして驚くべきことに、製品別の事故発生件数で最も多かったのがモバイルバッテリーです。スマートフォンやワイヤレスイヤホン、携帯扇風機といった製品を抑えてのトップです。つまり、私たちが日常的に持ち歩き、当たり前のように使っているモバイルバッテリーが、実は最も事故を起こしやすい製品だというデータが出ているのです。
消費者庁が公表している2020〜2024年度の事故情報でも、リチウムイオン電池使用製品の発熱・発火事故は162件報告されており、そのうちの136件(約84%)がリチウムイオン電池が原因とされています。
出典: NITE「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心」(2025年6月26日)/消費者庁「リチウムイオン電池使用製品に関する注意喚起」
NITEが警告する「やってはいけない」危険行動
NITEの発表の中で特に注目したいのが、事故に至った具体的な使用シーンです。データが示すのは「製品自体が悪い」だけでなく、ユーザーの行動が引き金になっているケースが多いという現実です。
例えば、こんな事例が報告されています。
- 膨らんできたバッテリーを無理やりケースに押し込んで使用していたところ、発火した
- ポケットに入れたまま圧力がかかり、内部でショートが発生した
- 夏場の車内に放置した結果、高温でバッテリー内部の電解質が酸化・劣化した
特に夏場は気温が高いうえに、車内や直射日光の当たる場所では想定以上の高温になります。NITEが「夏バテ(夏のバッテリー)」という言葉で注意喚起しているのは、まさにこの時期の事故急増を警戒してのことです。
ここで重要なのは、「膨らみ」や「異臭」はバッテリー内部で化学変化が起きている明確なサインだということ。この段階で使い続けると、内部ショートが起きやすくなり、突然の発火につながります。
2024年12月からのPSE法改正が変えた「安全基準」
モバイルバッテリーの安全性を語るうえで外せないのが、PSE(電気用品安全法)マークの存在です。しかし、ここで大きな見落としがちなポイントがあります。
2024年12月、モバイルバッテリーに関するPSEの技術基準が新しいものに完全移行しました。具体的には、従来の技術基準からより厳格なJIS C 62368-1という国際規格に準拠した新基準に変わっています。
つまり、2024年12月以前に認証された旧基準の製品は販売が終了しているということです。現在店頭に並んでいる製品は原則として新基準のものですが、ネット通販などでは旧基準の在庫がまだ流通している可能性もゼロではありません。
新しい基準では、より厳しい耐熱性や耐衝撃性の試験が課されています。購入する際には、PSEマークが付いていることはもちろん、製造事業者が明記されているかどうかも合わせてチェックする習慣をつけましょう。
出典: エレコム株式会社「モバイルバッテリーのPSE法に基づく安全基準」(2025年12月更新)/経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」
出火を防ぐための日常的な3つの対策
では、具体的に何をすればいいのでしょうか。NITEや消費者庁の資料をもとに、今日から実践できる対策を整理しました。
① 「膨らみ」「異臭」「異常な発熱」を見逃さない
モバイルバッテリーの外装に少しでも膨らみや変形があれば、すぐに使用を中止してください。バッテリー内部でガスが発生している証拠で、この状態で充電を続けると破裂や発火のリスクが急上昇します。
充電中に異常に熱くなる場合も同様です。通常の使用であれば、多少の温かさは感じますが、「持っていられないほど熱い」と感じる場合は危険信号です。
② 衝撃や圧力をかけない
バッテリーは精密機器です。バッグの中でほかの金属製品(鍵やコインなど)と一緒にしておくと、端子部分でショートを起こす可能性があります。ポケットに入れて座ったり、バッグの底で重いものに押しつぶされたりしないよう、少し気をつけるだけでリスクは減らせます。
③ 直射日光や高温多湿を避ける
先述のNITEデータが示すように、夏場の車内放置は最も危険な行為のひとつです。わずか数十分で車内温度は50℃を超えることもあり、バッテリー内部の電解液が劣化して発火につながります。外出時はできるだけ日陰に置くか、クーラーボックスなど高温になりにくい場所での保管を検討しましょう。
事故が起きる前に知っておきたい「正しい廃棄方法」
意外と見落とされがちなのが、廃棄時のルールです。多くの記事が「正しく廃棄しましょう」で終わってしまいますが、実際にどうすればいいのかわからないという声をSNSやQ&Aサイトで多く見かけました。
消費者庁の資料によると、リチウムイオンバッテリーを不適切に廃棄すると、ごみ収集車や処理施設で火災が発生する重大な事故につながります。
自治体ごとにルールが異なるのが現状で、一般的には以下の3つの方法があります。
- 自治体の不燃ごみや有害ごみとして出す(ただし端子を絶縁テープで覆う必要あり)
- 家電量販店のリサイクルボックスに投入する
- 購入したメーカーや販売店が回収を行っている場合はそれに従う
端子にテープを貼るのは、ショートを防ぐための重要な措置です。ただ捨てる前に、お住まいの自治体の公式サイトで最新のルールを必ず確認しましょう。Q&Aサイトでは「調べるのが面倒でそのまま捨ててしまった」という声もありましたが、それは周囲の安全を脅かす行為です。
出典: 消費者庁「リチウムイオン電池使用製品に関する注意喚起」
飛行機に持ち込む前に確認すべき航空会社ルール(2026年8月時点)
出張や旅行でモバイルバッテリーを機内に持ち込む際にも注意が必要です。
国際的なルールでは、定格容量が100Whを超えるモバイルバッテリーは機内持ち込みが禁止されています。また、100Wh以下のものでも預け入れ(貨物室)は禁止されており、必ず機内持ち込み手荷物として携行しなければなりません。
ここで問題になるのが容量表記の不明瞭さです。格安品の中には「mAh表記がない」「メーカー名が記載されていない」といったものがあり、空港の保安検査で没収されるトラブルが報告されています。
旅行前に「どの航空会社で」「どの製品を持っていくか」をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。LCCによってはさらに厳しい制限を設けている場合もあります。
安全なモバイルバッテリーの選び方とおすすめ製品
最後に、出火リスクを最小限に抑えるための製品選びのポイントをまとめます。
- PSEマーク(丸型)が本体に明記されていること
- 製造事業者名・連絡先が明記されていること(特に輸入品は要注意)
- 容量や入力出力規格が明瞭に表示されていること
- 過充電・過放電・過電流・短絡・温度検知の保護回路が搭載されていること(メーカーサイトで確認)
これらの条件を満たしたうえで、実際にユーザー評価の高い製品を紹介します。
高耐久性とコンパクト設計が両立したモデルで、複数の保護回路を標準搭載。PSEマークも明瞭で、初心者にも安心して使いやすい製品です。
通信キャリアが販売する公式アクセサリーのため、日本の安全基準をクリアしていることが明確。保証体制も整っており、不具合時の問い合わせ先も明確です。
ELECOM モバイルバッテリー 20000mAh PSE技術基準適合
国内メーカーが手がける製品で、PSE新基準への適合が公式に明記されています。大容量ながら保護回路が充実しており、車内放置時の耐熱試験もクリアしています。
モバイルバッテリーは「便利な道具」であり「慎重に扱う精密機器」
モバイルバッテリーは、私たちのデジタルライフに欠かせない便利な相棒です。しかしその中身は、高エネルギーの化学反応を利用した精密機器でもあります。
NITEが発表した5年間で1860件の事故データ、2024年のPSE基準変更、消費者庁が示す正しい廃棄方法――これらの情報を一つひとつ押さえることで、あなたのモバイルバッテリーライフは格段に安全なものになります。
今日からでいいので、お使いのモバイルバッテリーを手に取ってみてください。膨らみはありませんか?充電中に熱くなりすぎていませんか?型番から製造時期がわかるなら、新しい基準の製品かどうかも確認してみてください。
もし少しでも「これはおかしい」と感じたら、躊躇せず買い替えや廃棄を検討しましょう。安全を優先することが、あなた自身と周りの人を火災から守る一番の方法です。





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