モバイルバッテリーを選ぶとき、多くの人が気にするのが「安全性」と「容量」ですよね。特に飛行機に持ち込む際の制限や、夏場の車内での発火リスクなど、不安に感じたことがある方も少なくないでしょう。そんな中、注目を集めているのが「準固体電池」という新しいバッテリー技術です。結論から言うと、現時点で準固体電池を搭載した市販のモバイルバッテリーはまだ存在しません。しかし2024年から2025年にかけて、この分野で大きな進展がありました。今回は、最新の研究内容をもとに、準固体電池がモバイルバッテリーにもたらす可能性と、いつごろ手にできるようになるのかを、わかりやすくお伝えしていきます。
モバイルバッテリーと準固体電池の関係とは?まずは基礎知識から
そもそも準固体電池って何?という方のために、簡単に説明します。私たちが普段使っているモバイルバッテリーには、リチウムイオン電池が使われています。この電池は「液体の電解質」を使って電気をやり取りしているんですが、この液体が可燃性であるため、発火のリスクがどうしてもつきまといます。
一方で、次世代電池としてよく話題になる「全固体電池」は、液体ではなく「固体の電解質」を使うことで、発火リスクを大幅に下げられるといわれています。ただ、全固体電池にはまだ解決すべき課題も多く、実用化にはもう少し時間がかかりそうです。
そこで登場したのが「準固体電池」です。これは液体と固体の中間的な性質を持つ電解質を使った電池で、液体の良さ(イオンの動きやすさ)と固体の良さ(安全性)を両立させようという技術なんですね。モバイルバッテリーのような、日常的に持ち歩くデバイスにとって、この「安全性」と「性能」のバランスは非常に重要なポイントです。
2025年最新研究で判明!準固体電池の安全性はどこまで実証されたか
ここからが本題です。2024年10月に学術誌「Journal of Energy Storage」に掲載され、2025年1月に同志社大学から公式発表された研究が、準固体電池の実用化に向けた大きな一歩となりました(同志社大学公式リリース、2025年1月)。この研究は同志社大学とTDK株式会社の共同チームによるもので、不燃性の電解質を使った準固体リチウムイオン電池の開発に成功したと報告されています。
この研究のポイントは何かというと、まず電極ごとに最適な不燃性の電解液を使い分けている点です。具体的には、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェートとメチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネートという、いずれも不燃性の材料を採用しています。そして正極にはNCM811(ニッケル・コバルト・マンガン系の正極材)を、負極にはシリコンを使うことで、高い性能を狙っています。
さらに、電極の間にはOHARA社製の固体リチウムイオン伝導性ガラスセラミックシート(LICGC™)という特殊なシートを挟むことで、安全性を高める設計になっています。
で、気になる安全性の実証結果ですが、加速速度熱量測定(ARC)という試験で、約150°Cという高温域でも副反応による発熱が非常に低いことが確認されています。これは従来のリチウムイオン電池と比べて、かなり高いレベルの安全性です。研究チームはこの結果を「難燃性(flame-retardant)」と表現しており、決して「どんな条件下でも発火しない」という意味ではありませんが、従来品と比べて格段に安全な水準に達していることは確かです。
ただし、この研究で使われた試作品は30mAhクラスのポーチセルという、かなり小さなサイズのものです。モバイルバッテリーに搭載されているセルは通常数千mAh〜数万mAhなので、まだ実験室レベルの段階だという認識が必要です。
上位記事が触れていない準固体電池の“リアルな課題”
ここでちょっと、他の記事ではあまり掘り下げられていない現実的な課題についても触れておきます。
まず、この研究はあくまで「基礎研究」であり、量産化やコストダウンの目途はまだ立っていません。高性能なシリコン負極や専用設計の不燃性電解液、そして固体電解質シートなど、既存の電池よりも明らかに高いコストがかかることが予想されます(Interesting Engineering、2025年1月)。このコストが、モバイルバッテリーのような価格競争が激しい製品にどこまで受け入れられるかは、大きなハードルです。
また、全固体電池と比較した場合、準固体電池は「固体と液体のハイブリッド」であるがゆえに、完全な固体電池ほどのエネルギー密度向上は期待できないという見方もあります。つまり、安全性は大きく向上するけれど、容量やサイズの面で劇的な進化があるわけではない可能性も考慮しておくべきでしょう。
そしてもう一つ、多くの記事が「不燃性」という言葉で一括りにしている点には注意が必要です。先ほども述べたように、今回の研究でも「約150°Cまで安定」という条件がついています。モバイルバッテリーが実際に使われるシチュエーション(直射日光下の車内や、過充電、物理的な衝撃など)をすべてクリアしたわけではないので、「絶対に発火しない」というわけではないんですね。この点は、一次情報にあたって確認した事実です(Journal of Energy Storage、2024年10月)。
モバイルバッテリー用バッテリー技術を徹底比較!準固体電池の立ち位置
ここで、モバイルバッテリーに使われる可能性のある3つの技術を、ひとつの表にまとめてみました。
| 評価軸 | 従来型リチウムイオン電池(液体) | 全固体電池 | 準固体電池(今回の研究) |
|---|---|---|---|
| 安全性(発火リスク) | 高い(可燃性有機電解液) | 低い(不燃性固体電解質) | 低い(不燃性電解液+固体電解質のハイブリッド) |
| エネルギー密度 | 高い(現行基準) | 非常に高い(理論上) | 高い(次世代材料で実証中) |
| サイクル寿命 | 普通(経年劣化あり) | 課題(界面抵抗増大) | 良好(内部抵抗変化が小さいことを確認) |
| 実用化・製品化の見通し | 既に確立 | 開発競争段階(2030年前後と言われる) | 研究開発段階(ラボレベル/30mAh) |
| モバイルバッテリー搭載時の課題 | 過熱・発火対策必須 | コスト高、量産技術未確立 | コスト高、量産技術の未確立、さらなる大容量化の研究が必要 |
この表からわかるように、準固体電池は現時点では全固体電池と同様に実用化ハードルが高いものの、既存の液体電池と全固体電池の“弱点を補完する”技術として、非常に注目されています。
じゃあ、いつモバイルバッテリーで使えるの?
ここまで読んで、「で、いつ買えるの?」という疑問が湧いてきたと思います。率直に言うと、現時点で確定的な発売時期を言える情報はありません。
今回紹介した研究は、2024年10月に学術論文が公開され、2025年1月に大学からプレスリリースが出たばかりです(同志社大学、2025年1月)。研究チームのコメントとしても、車載用やコードレス家電への応用が期待される一方で、量産化やコストダウンにはさらなる研究が必要だとされています(Interesting Engineering、2025年1月)。
つまり、モバイルバッテリーとして製品化されるまでには、少なくとも数年から十年近いスパンを見ておくのが現実的です。全固体電池でさえ、2030年頃の実用化が目標と言われていますから、準固体電池もそれと同程度か、やや早いペースで進んでいるという印象です。
ただ、今回の研究は「30mAh」という小さなセルでの実証ながら、安全性と性能の両方で明確なデータを出せた点は大きな前進です。この技術が今後、より大きなセルでの実証実験や、量産技術の開発へとつながっていくことが期待されます。
モバイルバッテリーを今買うなら何を選ぶべき?
というわけで、現時点では準固体電池搭載のモバイルバッテリーは存在しません。でも、「じゃあ今は何を買えばいいの?」という方のために、現在市場で手に入る信頼性の高いモバイルバッテリーをいくつか紹介しておきます。
Anker Power Bank 10000mAh 大容量 モバイルバッテリー
Ankerはモバイルバッテリーの分野で圧倒的なシェアを誇るブランドです。この製品は小型軽量でありながら、多くのスマートフォンを1回以上フル充電できる容量を持ち、安全性も高いことで知られています。まずは信頼できる一品を、という方におすすめです。
CIO スマートフォン モバイルバッテリー 12000mAh 軽量 薄型 大容量
CIOの製品は、軽さと薄さを追求したい方に人気です。12000mAhという容量を確保しながら、コンパクトサイズにまとめられているのが特徴で、持ち歩きの負担を減らしたいというニーズに応えます。
ELECOM モバイルバッテリー 10000mAh PSE認証
ELECOMは日本のメーカーとして安定した品質が魅力です。PSE認証を取得しているので、日本の安全基準をクリアしているという安心感があります。価格も手頃で、コスパ重視の方に適しています。
これらの製品はいずれも、現時点で最も信頼できる技術である「リチウムイオンバッテリー」を搭載しており、正しい使い方をすれば十分に安全で便利なアイテムです。準固体電池の時代が来るまでは、こうした製品を上手に使いこなすのが現実的な選択肢でしょう。
モバイルバッテリーと準固体電池の未来に期待すること
最後に、もう一度全体を振り返ってみましょう。準固体電池は、従来のリチウムイオン電池が抱える「発火リスク」という根本的な不安を、全固体電池ほど遠い未来の話にせず、より現実的なタイムラインで解決できる可能性を秘めた技術です。
今回の同志社大学とTDKの研究は、その第一歩として非常に重要な成果を出しました。特に、約150°Cの高温でも発熱が抑えられるというデータは、モバイルバッテリーのような身近な製品にとって、大きな安心材料になるでしょう。
とはいえ、製品化にはまだ時間がかかりますし、コストや大容量化などの課題も残されています。ですから今は、最新の研究動向を“知っておく”ことで、これから買う製品の判断基準を少しアップデートしておくくらいの気持ちでいいのかもしれません。
数年後、モバイルバッテリーのコーナーに「準固体電池搭載」というラベルの商品が並ぶ日を、楽しみに待ちながら。それまでは、今ある製品を上手に使って、快適なモバイルライフを送りましょう。





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