今でこそ、メカニカルキーボードは星の数ほどあります。でも、ちょっと振り返ってみてください。2013年。あの頃は、今のブームの「原点」とも言える、熱くて硬派な製品がひしめいていた時代です。
「そういえば、あの頃何が人気だったっけ?」
「今さらだけど、中古で当時の名機を探してみたい」
「レトロPCを組むから、雰囲気に合うキーボードが欲しい」
そんなふうに、ちょっとマニアックな好奇心や悩みを抱えているあなたに、ぴったりの内容です。今ではもう新品では手に入らない、でもだからこそ語り継ぎたい。2013年当時に選ぶ、定番メカニカルキーボードをじっくり紹介していきます。
なぜ2013年がメカニカルキーボードの転換点だったのか
「2013年って、そんなに特別な年なの?」そう思うかもしれません。実はこの年、日本のメカニカルキーボードシーンは大きな変化を迎えていました。
一番のトピックは、Cherry MX赤軸の本格的な普及です。
それまでは「黒軸(重いリニア)」「青軸(クリック感あり)」「茶軸(軽いタクタイル)」が主流でした。そこに、軽い力でスコスコと押せるリニア軸の赤軸が浸透し始めたんです。当時の評価は「茶軸の軽快さと黒軸のリニア感を併せ持つ、いいとこ取りの軸」。ゲーマーだけでなく、長文を打つライターにも支持され始めました。
また、テンキーレスや60%サイズといったコンパクトモデルが「変態キーボード」から「実用的な選択肢」へと変わり始めたのも、この時期です。
2013年当時の定番モデル10選
あの頃、家電量販店のキーボードコーナーや、通販サイトのランキングを賑わせていたモデルたち。その中でも特に印象的だった10機種を振り返ってみましょう。すべて生産終了品なので、今探すなら中古がメインルートです。
1. FILCO Majestouch 2 シリーズ
メカニカルキーボードの「ど真ん中」。当時、これを基準に他のキーボードを語る人が多かったですね。剛性感のある筐体、安心の日本語配列、そして豊富な軸のバリエーション。文字が刻印されていない天面の「FILCO Majestouch 2 NINJA」も、ミニマルな見た目で人気を博しました。「最初の1台に迷ったらこれ」と言われていた、まさにキング・オブ・メカニカルです。
2. FILCO Majestouch MINILA
今でこそ60%キーボードは市民権を得ていますが、当時はかなり尖った存在。このFILCO Majestouch MINILAは、親指で操作するダブルFnキーが独創的でした。「スペースキーが短い!」と戸惑う声もありましたが、この小さなボディに全てを詰め込むという思想が、多くのミニマル志向ユーザーを惹きつけました。
3. FILCO Majestouch 2 Convertible
「メカニカルをワイヤレスで使いたい」。今では普通のこの願望を、当時いち早く叶えてくれたのがFILCO Majestouch 2 Convertibleです。Bluetooth接続に対応し、デスク周りのケーブルを減らせるというだけで、大きなアドバンテージでした。バッテリーではなく単三電池で動くところも、交換が楽で好評だったのを覚えています。
4. CM Storm Quick Fire Rapid
ゲーミングデバイスブランド「CM Storm」から出ていたテンキーレスキーボードです。何が良かったって、ゲーマー向けの派手な装飾を極力排いた、シンプルで質実剛健なデザイン。「ゲーミングデバイスはデザインが苦手…」という人々の、貴重な受け皿でした。赤軸モデルは本体がブラックで統一されていて、所有感も抜群。ブランドロゴも控えめで、オフィスにも馴染みやすい一台でした。
5. Corsair Vengeance K60
アルミのヘアライン加工が施されたフレームがひときわ高級感を放っていたモデルです。Corsair Vengeance K60の最大の特徴は、FPSゲーマー向けの交換可能なリストレストと、WASDキー用の赤いラバーキーキャップ。ただ、すべてのキーがメカニカルではなく、一部がメンブレン方式だったため、その点を気にするマニアもいました。でも、見た目のインパクトは当時随一でしたね。
6. SteelSeries 6Gv2 Red Switch
「キーボードは消耗品ではなく、相棒だ」と言わんばかりの頑丈さがウリでした。もともと黒軸モデルが人気でしたが、2013年に赤軸版が登場。重たい打鍵感が好みではない層を取り込みました。シンプルな黒い筐体に、主張しすぎないSteelSeriesのロゴ。派手さはないけど、デスクに置くと「分かってる」感じが出る。そんな渋い魅力がありました。
7. ARCHISS AS-KB91LR / AS-KB87LR
「メカニカルはいいけど、とにかく高いんでしょ?」というイメージを覆した、コストパフォーマンス重視の日本ブランドです。ARCHISS AS-KB87LRは、特に「赤軸を使ってみたい」という入門者に最適でした。日本語配列と英語配列が選べ、余計な機能を削ぎ落としたシンプルさが、むしろ玄人ウケしました。今で言う「Karabiner-Elements」のようなキーカスタマイズは一般的ではなかったので、シンプルが正義だった時代です。
8. Rosewill RK-9000RE
これには度肝を抜かれました。なんと、実売6000円台で買えるCherry MX赤軸フルサイズキーボード。コストダウンのため、筐体の作りやケーブルは至ってシンプルですが、打鍵の核心部分には妥協なし。北米のPCパーツブランド「Rosewill」の製品で、並行輸入品などが主な入手経路でした。「とにかく安くメカニカルを始めたい」という全ての人の背中を押した、立役者です。
2013年モデルを現代で使うときの注意点
さて、ここまで紹介してきた名機たち。中古で手に入れたとして、快適に使うためのポイントがいくつかあります。
PS/2接続のススメ
当時のゲーミングキーボードでは、USBよりPS/2接続の方がポーリングレートが高く、同時押し(Nキーロールオーバー)に強いとされていました。あなたのPCにPS/2ポートがまだ残っているなら、迷わずPS/2接続で使うのが吉です。もしUSBに変換するなら、単なる変換コネクタではなく、Nキーロールオーバーに対応した「アクティブコンバーター」を使わないと、同時押しでキーが暴走します。
スイッチのヘタリを見極める
中古品で一番気になるのはここです。Cherry MXスイッチは耐久性が高いですが、長年の使用でバネがヘタっている可能性があります。特にゲームで酷使されたWASDキーや、文章作成で使われたスペースキー、Enterキーは念入りにチェック。打鍵感が他と明らかに違ったり、チャタリング(一度押しただけで複数回入力される症状)が起きる個体は避けましょう。
まとめ:2013年の遺伝子は今も生きている
2013年当時に選ぶ、定番メカニカルキーボード。こうして振り返ると、今のトレンドの「種」がここにあったことがよく分かります。コンパクト化、ワイヤレス化、赤軸の台頭…。決して派手ではなかったけれど、一つひとつの製品が「いい道具」であろうとする強い意志を持っていました。
もし中古市場でこれらの名機に出会ったら、その打鍵感にしばらく浸ってみてください。きっと、当時の熱気を指先に感じられるはずです。今日はあの頃にタイムスリップして、長く付き合える相棒を探す旅に出てみませんか?

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