「モバイルバッテリー、どのメーカーを選べば火災のリスクが少ないんだろう?」
そう思ってこの記事にたどり着いたあなたは、きっとニュースで火災事故を見て不安になったり、自分が使っている製品が危なくないか調べている最中かもしれません。
率直に言います。「このメーカーなら絶対に安全」という製品は、今のところ存在しません。 実際、2025年には東京消防庁に報告されたリチウムイオン電池関連の火災が過去最多の382件に達し、そのうちモバイルバッテリーが130件と最も多いというデータもあります(東京消防庁公表、2025年)。さらに、皆さんが「安心」だと思っているあのAnkerですら、2023年から2026年にかけて複数回のリコールを実施しています。
でも、ご安心ください。大切なのは「絶対安全なメーカーを探す」ことではなく、「リスクを理解した上で、自分で選ぶ目を持つ」ことです。この記事では、2026年8月時点の最新のルールや製品動向、そして過去のリコールデータを独自に集計した表をもとに、火災リスクと正面から向き合ったモバイルバッテリーの選び方を徹底解説します。ユーザーのリアルな声もお届けしながら、あなたの不安を具体的な対策に変えるお手伝いをします。
今、モバイルバッテリーを取り巻く2026年の「3大変化」
まず最初に、2026年に入ってから起きた、知っておくべき大きな変化を3つ紹介します。この情報は、多くのネット記事ではまだ十分に反映されていません。
1つ目は、飛行機への持ち込みルールが厳しくなったことです。 国土交通省は2026年4月24日から、航空機内に持ち込めるモバイルバッテリーの数を2個までに制限し、機内での充電および他機器への給電を全面禁止にしました(国土交通省公式発表、2026年4月24日施行)。旅行や出張の予定がある方は、このルール変更を必ず頭に入れておいてください。
2つ目は、あのAnkerが新しい電池セルを発表したことです。 2026年5月27日、アンカー・ジャパンは従来の三元系リチウムイオン電池の安全性を高めた「Neo Lithium-ion Battery」という新電池セルを発表しました(日経クロステック、2026年5月27日)。半固体電池やナトリウムイオン電池など、まったく新しい素材を採用するメーカーが増える中、あえて従来型の進化系で勝負に出たのは興味深いポイントです。
3つ目は、火災の統計が過去最多を更新したことです。 先ほども触れた通り、東京消防庁のデータで2025年のリチウムイオン電池火災が382件と、これまでで最も多くなっています。
これらの最新動向を踏まえつつ、本題の「メーカー別のリスク」と「選び方」に深掘りしていきましょう。
モバイルバッテリー火災の原因とPSEマークの「ウソ」と「ホント」
火災の原因としてよく言われるのは、「衝撃」「熱」「経年劣化」です。これはその通りなのですが、もう一歩踏み込んで、「なぜPSEマークがあるのに火災が起きるのか」を理解しておくことが、メーカー選びの本質です。
PSEマークは「電気用品安全法」の技術基準に適合した製品に表示が認められます。しかし、このマークはあくまで「製品が設計上の安全基準を満たしている」ことを示すものであって、以下のことを保証するものではありません(消費者庁・NITE資料より)。
- 量産されるすべての個体が、試験を通過したサンプルと全く同じ品質であること
- 長期間使い続けた後の安全性
- 想定外の暑い車内など、過酷な環境下での安全性
つまり、PSEマークは「安全の絶対条件」ではなく、「安全のためのスタートライン」に過ぎないのです。この認識を持つだけで、「PSEマーク付きだから大丈夫」という過信を防ぐことができます。
【独自集計】過去のリコールから見る、メーカー別の「事故の実態」
さて、ここからが本記事の一番の独自コンテンツです。消費者庁のリコール情報サイトや専門メディアの集計をもとに、2020年から2026年までにリコール(回収・無償交換)を実施した主要メーカーを一覧にしました。
表:2020〜2026年 主要メーカーのリコール実施状況
| メーカー(販売元) | 主なリコール対応年 | 対象製品数の目安 | 備考(具体的な製品例など) |
|---|---|---|---|
| アンカー・ジャパン | 2023年, 2024年(2回), 2025年(2回), 2026年 | 10製品以上 | SoundcoreやMagGoなど、人気シリーズで複数回発生 |
| ティ・アール・エイ(cheero) | 2023年, 2025年 | 1製品 | 「cheero Flat 10000mAh」は2025年の山手線火災で再注目 |
| 小米技術日本(Xiaomi) | 2025年 | 1製品 | 「Xiaomi 33W Power Bank 20000mAh」 |
| CIO | 2025年 | 1製品 | 「SMARTCOBY Ex01 SLIM」 |
| ベルキン(Belkin) | 2024年 | 1製品 | Apple Watch充電器一体型モデル |
| エアージェイ | 2024年 | 1製品 | 2色展開の製品 |
| イケア・ジャパン | 2024年 | 2製品 | 2つの容量展開の製品 |
| Baseus(バーサス) | 2024年 | 1製品 | マグネット式ワイヤレスモデル |
| その他(住本製作所・ノジマ・llano等) | 2021〜2025年 | 各1製品 | OEM製品やプライベートブランド品も含む |
(出典:消費者庁リコール情報サイトを基にk-tai.watch(2025年7月・12月)の集計を元に作成)
この表からわかる「意外な真実」とは?
この表を見て、多くの人が驚くのは「Ankerがダントツでリコールを実施している」という点ではないでしょうか。人気ブログやSNSでは「Ankerは安全」という声が非常に多いですが、それは「売れているから情報量が多い」という側面もあります。そして同時に、発売後に問題が見つかれば迅速にリコールを実施するという、メーカーとしての責任を果たしているとポジティブに捉えることもできます。
一方で、山手線の車内で火災を起こしたことで有名になったcheeroの製品も、実はリコール対象だったことが後日公表されました(ITmedia NEWS、2025年7月25日)。事故後、製品名が判明するまでに4日間を要したことは、「メーカー名がすぐに出てこない」ことへの不満として、多くのユーザーの声を集めました(XやYahoo!知恵袋での投稿より)。
ここで重要なのは、「リコールをしていない=安全」ではなく、「リコールをしている=危険」でもないということ。大事なのは、そのメーカーが問題に対して誠実に対応しているかどうかです。
ユーザーは何に不安を感じ、何を求めているのか
実際にSNSやQ&Aサイトでは、モバイルバッテリーに関する不安の声が数多く寄せられています。その傾向を分析しました。
- 「安物を使っていたら膨張してきた」 といった物理的な異常を報告する声が非常に多く見られました。
- 「どのメーカーが安全かわからない」「PSEマークがあっても意味がないのでは」 といった、情報過多による混乱や不信感が多数確認されています。
- また、リコール情報が出た後に 「自分が使っている製品が対象かどうか、どうやって調べればいいのか」 という具体的な手順に困っている声も複数ありました。
これらの声が示すのは、ユーザーが「メーカーのブランド名」だけで判断するのではなく、「自分で情報を確認する方法」を身につけたいと思っているということです。
もう迷わない!安全なモバイルバッテリーを選ぶための3つの実践的ステップ
それでは、火災リスクを考慮した上で、どのようにモバイルバッテリーを選べば良いのか。ここでは、あなたが自分で判断できるようになるための具体的なステップを紹介します。
ステップ1:公的機関の情報で「買ってはいけない製品」をチェックする
一番確実なのは、消費者庁のリコール情報サイトで、購入を検討している製品や既に持っている製品の型番を検索することです。製品に「PSEマーク」があっても、それは出発点。購入前に「リコール対象になっていないか」を確認する習慣をつけましょう。
ステップ2:極端な「安さ」や「大容量」を追求しない
あまりにも安価な製品や、バッテリーセルのコストを著しく下げなければ実現できない大容量製品は、セルの品質や保護回路の省略につながっている可能性があります。価格と性能のバランスが取れた、いわゆる「ミドルレンジ」の製品を選ぶのが無難です。
ステップ3:ユーザーレビューの「発熱」に関するコメントをチェックする
ECサイトのレビューで「充電中にすごく熱くなる」というコメントが多い製品は、発火リスクのサインかもしれません。「デザインが良い」「軽い」といった外形的な評価より、「発熱」や「耐久性」に関するレビューを重視しましょう。
【おすすめ製品】2026年8月現在、評価が分かれる製品選び
ここでは、調査で名前が挙がった製品の中から、特に注目度の高い製品を紹介します。
Anker PowerCore 10000
推奨理由:世界最大手の販売実績を持ち、リコール対応も比較的迅速に行われているシリーズです。新型セル「Neo Lithium-ion Battery」の搭載が今後進むことが期待されますが、現行モデルも安定した性能評価を得ています。
cheero Flat 10000mAh
推奨理由:過去にリコールと火災事故の対象となった製品です。現在は改善が施されていると思われますが、この記事を読んでいるあなたは、購入前に公式サイトなどで最新の安全性が確認されているか、必ず自分で調べてから判断するようにしてください。この製品名を知ることは、リスクを知る第一歩として重要です。
CIO SMARTCOBY Ex01 SLIM Qi2 & CABLE
推奨理由:2025年にリコールを経験しながらも、その後の対応が評価されています。「軽さ」と「デザイン」を重視した製品ですが、その分バッテリー容量を抑えた設計になっているため、過度な負荷がかかりにくいという安全面でのメリットも考えられます。
Xiaomi 33W Power Bank 20000mAh
推奨理由:大容量でありながら価格が抑えられている点が魅力ですが、2025年にリコール対象となった製品です。現在は対策が取られているはずですが、この製品を選ぶ際には「大容量=リスクが高まる可能性がある」という認識を持って使用することが大切です。
※重要な注意点:ここで紹介した製品はあくまで一例であり、これらの製品が将来にわたって絶対に安全であることを保証するものではありません。どんなに有名メーカーの製品でも、購入後は定期的に膨張や発熱がないかチェックし、異常があればすぐに使用を中止してください。
万が一、発煙・発火したらどうするか(NITE推奨の対処法)
もし手元のモバイルバッテリーから煙や炎が出ているのを発見したら、絶対に近づいてはいけません。製品評価技術基盤機構(NITE)のガイドライン(2024年6月26日)では、以下の対処法が推奨されています。
- 近寄らない:まずは安全な距離を取ります。
- 消火する:火花が収まったら、大量の水をかけて消火します(感電のリスクよりも、熱暴走を止めることを優先します)。
- 通報する:消火後は水没させた状態で消防署に通報します。
普段からこのフローを頭の片隅に入れておくだけで、万が一の際のパニックを防ぐことができます。
モバイルバッテリー火災問題と「メーカー」の向き合い方
ここまで読んでいただいて、お分かりいただけたでしょうか。この問題の本質は、「火災を起こさないメーカー」を探すことではなく、「もしもの時に誠実に対応してくれるメーカーを選び、自分自身も適切な使い方と情報収集を心がける」ことにあります。
有名メーカーだからといって過信せず、かといって無名メーカーを全て危険と決めつけるのでもなく、今回紹介したリコール情報のチェック方法や選び方のステップを参考に、あなた自身の目で製品を選んでください。その姿勢こそが、モバイルバッテリー火災というリスクから身を守る、最も確かな方法です。

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