「モバイルバッテリーの残量がなくなってしまった。でも手元にもう一台モバイルバッテリーがある。これで充電できないかな?」
この疑問、めちゃくちゃわかります。結論から言うと、モバイルバッテリーをモバイルバッテリーで充電すること自体は物理的に可能です。ただし、「できる」と「すべき」は別の話。充電の効率がかなり悪くなるうえ、発熱によるバッテリー劣化のリスクもあるので、基本的には非常時の最終手段として考えておくのがいいでしょう。
この記事では、実際にどうやって接続するのか、どんなリスクがあるのか、ACアダプタを使う場合と比べてどれくらい効率が違うのかまで、Q&Aサイトで実際に寄せられているユーザーの声やメーカー公式の情報をもとに徹底解説します。さらに2026年4月以降の最新ルールにも触れながら、安全な使い方をまとめていきます。
モバイルバッテリーをモバイルバッテリーで充電する方法と注意点
「できる」とわかっても、どうやって接続すればいいのか。ここが意外と落とし穴なんです。
必要なものと接続手順
用意するものはたったの2つ。充電したいモバイルバッテリー(以下、バッテリーB)と、電源となるモバイルバッテリー(バッテリーA)、そしてUSBケーブルだけです。
接続のコツはこれだけ。
- バッテリーA(電源側)の出力ポート(OUTPUT) と
- バッテリーB(充電したい側)の入力ポート(INPUT) を
- USBケーブルでつなぐ
これだけです。特にUSB-C端子同士をつなぐ場合は要注意。USB-Cは電力の方向が決め打ちされていないので、接続した瞬間に「充電したい側」と「充電される側」が逆になることがあります。つまり、残量が多い方から少ない方へ自然に流れるわけではないんです。ポートを間違えると、逆にバッテリーAの残量が減ってしまうことも。
これを防ぐには、出力側は必ずUSB-A端子を使うのが確実です。USB-Aは基本的に出力専用なので、迷わず充電できます。
どうして充電できるの?
モバイルバッテリーには、大きく分けて「電気をためる入力ポート(INPUT)」と「電気を出す出力ポート(OUTPUT)」があります。バッテリーAの出力ポートから出た電気がケーブルを通ってバッテリーBの入力ポートに入る。単純な仕組みですね。モバイルバッテリーも、中に入っているリチウムイオン電池から見れば「ただの電気を受け取る機器」にすぎません。
でも、ここで「出力ポートから出た電気を別のモバイルバッテリーの入力ポートで受け取る」ということは、バッテリーAにとっては「放電」、バッテリーBにとっては「充電」。これって何か変な感じがしますよね? 回路として成立しているかというと、問題はないんです。ただし…。
充電中に気をつけるべきこと
モバイルバッテリー同士の充電で一番気になるのが「熱」。バッテリーAは放電で発熱し、バッテリーBは充電で発熱します。つまり、両方のモバイルバッテリーが同時に熱を持つことになるんですね。
一般社団法人 電機・電子機器再使用・リサイクル推進協議会(EME)の資料(2021年公表)によると、リチウムイオン電池の最高許容周囲温度は約45℃とされています。この温度を超えると内部で化学反応が進み、バッテリーの劣化が早まるだけでなく、最悪の場合、発火リスクも高まります。
特に、今回のような「モバイルバッテリー→モバイルバッテリー」の充電は、放電と充電の両方で熱が発生するため、ACアダプタを使った通常充電よりも発熱しやすい傾向があります。
エレコムは公式サイト(2026年5月更新)で、パススルー充電(モバイルバッテリーを充電しながらスマホも充電する機能)について「同時に使用すると発熱が大きくなる」と注意喚起しています。同様の理屈で、モバイルバッテリー同士の充電も熱対策が必須です。
実際にやってみた人の声は? Q&Aサイトから見えるリアル
Yahoo!知恵袋などでこのテーマを調べてみると、実際に試した人の投稿がいくつか見つかりました(2026年8月時点)。
多くの投稿で共通していたのは「充電自体はできた」という体験談です。Type-C同士の接続ではうまくいかなかったけど、USB-Aから出力したら充電できた、というケースが複数報告されていました。
ただし、ほとんどの投稿者が「すごく効率が悪い」「熱くなる」「結局ACアダプタを使った方が早い」と結論づけています。中には「30%くらいロスするんじゃないか」と指摘する声もありました。これはあくまで個人の体感値ですが、充電と放電の両方で変換ロスが発生することを考えれば、数字としてはあり得ない話ではありません。
Q&Aサイトの回答に共通するニュアンスは、「できるけどやらないほうがいい」という判断でした。物理的な可否ではなく、「現実的かどうか」で判断しているのが印象的です。この視点はメーカー公式の基礎知識記事にはあまり見られない、ユーザーならではのリアルな感覚だと思います。
充電効率はどれくらい違う? 通常充電と比較してみた
「モバイルバッテリー同士の充電」がどれくらい非効率なのか、通常のACアダプタ充電やパススルー充電と比較してみましょう。
| 比較項目 | ACアダプタで充電(通常) | モバイルバッテリー同士で充電 | パススルー充電(AC+同時給電) |
|---|---|---|---|
| できるか | ○ 標準的な方法 | ○ 物理的には可能(USB-A→入力が確実) | ○ 対応製品に限る |
| 充電効率(ロス) | 基準(変換ロスあり) | ロスが二重に発生(放電ロス+充電ロス) | 通常充電と同等(但し発熱増加) |
| 熱の発生 | 中 | 中〜高(放電+充電の両方で発熱) | 高(充電器+モバイルバッテリー+給電で三重発熱) |
| おすすめ度 | ◎ 最優先 | △ 非常時のみ。ACアダプタがない緊急時 | ○ 便利だが発熱対策必須 |
| 機器への影響 | 通常使用で問題なし | 過度な熱でバッテリー劣化を早めるリスク | 発熱による劣化リスクあり。過熱防止機能付きが安全 |
※効率ロスの数値は一般論としての考え方であり、特定の製品における計測値ではありません。
この表を見ると、モバイルバッテリー同士の充電が「緊急避難的な手段」にすぎないことがよくわかります。充電にかかる時間も長くなりますし、その間に発生する熱でバッテリーの寿命を縮めるリスクまで負うくらいなら、ACアダプタを探すか、パススルー充電対応の製品を選ぶ方が賢明です。
Anker Japanの公式ブログ(公開日不明、2026年時点の情報)では、モバイルバッテリーの保管温度を0℃〜35℃、使用温度を0℃〜40℃と定めています。この温度範囲を超えるとバッテリー内部にダメージが蓄積され、膨張や劣化の原因になります。モバイルバッテリー同士の充電は、この温度範囲を超えやすい行為だという認識を持っておきましょう。
知っておきたい2026年最新ルール 飛行機・電車での制限
2026年に入って、モバイルバッテリーに関するルールが大きく変わりました。この記事を読んでいるあなたは、すでにご存知かもしれませんが、念のため押さえておきましょう。
航空機内持ち込みルールの変更(2026年4月24日施行)
国土交通省の基準により、飛行機に持ち込めるモバイルバッテリーの数が制限されました。一人あたり2個まで(ただし100Whを超え160Wh以下のものに限る)というルールです。つまり、普通のモバイルバッテリー(5,000mAh〜20,000mAh程度)は問題ないですが、大量に持ち込むことはできなくなりました。
そして何より重要なのが、機内でのモバイルバッテリーの使用および充電が禁止されたことです。これはつまり、飛行機の中で「モバイルバッテリーをモバイルバッテリーで充電する」行為はもちろん、スマホにモバイルバッテリーをつなぐこと自体がNGになりました。
電車内での注意喚起(2026年6月)
さらに、東急電鉄が2026年6月、車内でのモバイルバッテリー使用を控えるよう案内を始めました。鉄道事業者としては初めての動きです。現時点では法的な規制ではなく「お願い」の段階ですが、今後の広がりを見守る必要がありそうです。
これらの動きからわかるのは、モバイルバッテリー自体の安全意識が社会全体で高まっているということ。そもそも「モバイルバッテリー同士で充電する」という行為は、通常の使用よりもリスクが高いと考えるべきでしょう。
消費者庁は2019年7月に公表した資料で、2013年6月から2019年6月末までの約6年間でモバイルバッテリーに関連する事故が162件(発煙・発火・過熱78件、火災39件)発生したと報告しています。このデータはやや古いものの、モバイルバッテリーが持つリスクの大きさを示すものとして無視できません。
安全に使うための3つの鉄則
ここまでの話を踏まえて、どうしてもモバイルバッテリー同士で充電しなければならない場合の安全ルールをまとめます。
1. 熱をチェックしながら行う
充電中はこまめに両方のモバイルバッテリーの温度を確認しましょう。「ちょっと温かい」くらいならまだしも、「持っていられないほど熱い」と感じたら即座に充電を中止してください。EMEの資料でも指摘されている通り、高温はリチウムイオン電池の大敵です。
2. 長時間の充電を避ける
効率が悪いぶん、どうしても充電時間が長くなります。長時間の充電は発熱のリスクを高めるため、目安として1時間を超えるようなら中断を検討しましょう。どうしても必要な場合でも、充電中はそばを離れず、常に様子を見られる状態を保ってください。
3. PSEマークの確認を忘れずに
消費者庁も繰り返し呼びかけているポイントですが、PSEマーク(電気用品安全法の適合マーク)のない粗悪品は絶対に使わないでください。安全装置が省略されている製品は、ちょっとした衝撃や熱で発火するリスクが格段に高まります。PSEマークが付いている製品でも過信は禁物ですが、付いていない製品は論外です。
それでもやっぱり不安なら… 今買うべき安全なモバイルバッテリー
「モバイルバッテリー同士の充電なんてリスクを負うくらいなら、最初からしっかりした製品を選びたい」という方のために、最近注目されている安全な選択肢を紹介します。
最近のトレンドとして、準固体電池(電解液をゲル状にしたもの) を搭載したモバイルバッテリーが各社から発売されています。従来のリチウムイオン電池に比べて発火リスクが低いとされ、特に密閉空間(飛行機や電車内)での使用に適していると言われています。
MOTTERU 準固体モバイルバッテリー MOT-MBSS10002-AM
この製品は準固体電池を採用しており、従来のリチウムイオンモバイルバッテリーと比べて安全性が高いのが特徴です。発熱リスクが抑えられているため、モバイルバッテリー同士の充電のような負荷のかかる使い方にも対応しやすい設計です。
Anker Power Bank (10000mAh, 22.5W)
Ankerの人気モデルです。出力ポートと入力ポートが明確に分かれており、接続ミスが起きにくい設計です。また、過熱保護機能も標準搭載。一般的な使い方であれば、非常に安定したパフォーマンスを発揮します。
エレコム 残量表示機能付きモバイルバッテリー DE-C76-10000BK
エレコム製品はパススルー充電に関する注意喚起を公式に行っているメーカーです。そのぶん安全設計にも力を入れており、複数の保護回路を搭載しています。残量表示機能付きで、バッテリー残量をひと目で確認できるのも便利です。
これらの製品は、いずれもPSEマークを取得しており、国内で安心して使える製品です。ただし、どの製品でも「モバイルバッテリー同士の充電」を推奨しているわけではない点は注意してください。あくまで緊急時の選択肢のひとつとして考えましょう。
そもそも「モバイルバッテリーをモバイルバッテリーで充電」するくらいなら、ACアダプタを探そう
ここまで読んでいただいて、もうお気づきかもしれませんが、モバイルバッテリーをモバイルバッテリーで充電する行為には、デメリットがとても多いんです。効率が悪く、発熱リスクが高く、バッテリーの寿命を縮める可能性がある。そして2026年の最新ルールでは、飛行機内での使用自体が禁止されました。
「物理的にはできる」という事実と、「実際にやるべきか」という判断は、まったく別の話です。筆者としては、ACアダプタが見つからない非常時の最終手段と位置づけるのが妥当だと思います。
どうしてもやらざるを得ない状況なら、今回紹介した安全ルールを厳守してください。そして普段から、モバイルバッテリーはこまめに充電しておく、予備のACアダプタを持ち歩くといった習慣づくりを心がけるのが、結局は一番の安全対策です。
モバイルバッテリーをモバイルバッテリーで充電するという行為は、「できる」けど「やらない」が正解。そのことを頭の片隅に置いて、賢く安全にモバイルバッテリーを使いこなしていきましょう。

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